令和元年度 和光技研技術発表会

 今年で第21回目となる「和光技研技術発表会」を令和元年6月15日(土)に開催いたしました。

 本年度は、建設材料学(セメントコンクリート、アスファルトコンクリート)に関して専門的な知見をお持ちの岩手大学 理工学部 システム創成工学科 准教授 小山田 哲也先生を特別講師としてお招きして、御講演いただきました。

 また、昨年度に引き続き、技術テーマ部門「自由テーマ発表」にて、若手技術者による発表等を行いました。


■特別講演

東北地方におけるコンクリート構造物の品質・耐久性確保の実践

岩手大学 理工学部 システム創成工学科 小山田 哲也 准教授

 東北地方の復興道路・復興支援道路において、道路・トンネル・橋梁等の多くの構造物の劣化が懸念されているなか、耐凍害性の確保が課題となっている。

 東北地方の自然環境、コンクリートの使用環境、劣化特性等をふまえて、今後必要とされるコンクリート構造物の品質確保にむけて、多くの取り組み・評価事例をもとに問題の提起と将来的に目指すべき方向性を提示いただきました。

 

 

■社内技術士講演

技術者を幸せにするための志向倫理

道路構造地質グループ 長谷川 直久

 今まで技術者倫理として教えられてきたことは、技術者として間違ったことをしないこと。つまり予防倫理に関するものが殆どであった。
 しかし、近年新たな考えとして、技術者として良く生きること(Well-being)を目標として、取るべき行動を考える「志向倫理」について議論されるようになってきた。
 本発表では、「志向倫理」の考え方等について発表が行われました。

 

■技術テーマ部門【自由テーマ発表】

急激な過疎化に対応する地域役場の取り組み

建築補償測量グループ 名古屋 龍弥

 現在、国内の多くの地域では、人口減少による過疎化が懸念されており、特に小規模な町ではその深刻さは増している。その中でも炭鉱で栄えたK町は、人口が約60年で10分の1まで減少している。
 本発表では、同町役場が地域存続のために行っている対策について説明するとともに、人口減少で増加する公営住宅などの空き家問題に対する取り組みを、自身の卒業論文をもとに発表が行われました。
 

■技術テーマ部門【技術テーマ発表】

※【技術テーマ部門】の詳細については「2019技術レポート」をご覧ください

 

環境DNA分析の野外調査適用に対する結果と考察

河川砂防環境グループ 田中 千暉

 環境 DNA 分析は、水中や大気中に含まれる生物の DNA を採取・分析することで対象種の生息有無や、生息している生き物を網羅的に把握することが可能な技術である。本技術を野外調査に適用することで、調査に係る労力の軽減や、調査による生息環境の負荷を低減することが可能である。
 本発表では、道北の山地渓流において、ザリガニを対象に、従来手法(採取法)と環境 DNA 分析を併用し、野外調査に環境 DNA 分析が現時点で適用可能どうかの考察について発表が行われました。

 

雪崩予防柵設置にともなう既設現場吹付のり枠工の補強対策について

道路構造地質グループ 八木澤 博文

 当該箇所では、新設道路完成直後の冬期に現場吹付のり枠工施工範囲で雪崩が発生し、その除排雪のために通行止めが実施された。
 本発表は、この雪崩を防除するため設置した雪崩予防柵による積雪荷重の補強対策として、現場吹付法枠工のり面にグラウンドアンカー工を採用した事例の紹介が行われました。

 

多発する河川災害への設計対応

水工グループ 住出 徹

 河川災害箇所の多くは新災(施設完成後1年以上の被災)であるが、今般では異常気象(豪雨)が連続的に発生し、未満災(施設完成後1年未満の被災)や内未成(過年発生災害で、未工事)の被災が多い傾向にある。
 そのなかで未満災や内未成の災害申請では、設計の不備・工事施行の粗漏に起因した災害でないことを立証するための写真(工事・被災)や被災原因、復旧方法の整理が特に重要である。
 本発表では、旭川地区を例に未満災や内未成の河川災害設計について紹介が行われました。

 

有害物質が含有した塗膜の処理と取扱いについて

道路構造地質グループ 山田 裕太

 近年、多くの自治体で橋梁の長寿命化を目指し、補修工事が行われている。中でも、鋼橋における塗装の塗り替え補修では、有害物質を含む塗料が使用されているケースが多く、塗膜の除去方法や処理方法について様々な検討が行われている。
 本発表では、後志地方の橋梁で塗装の塗り替えを検討した事例を基に、塗膜処理の実情や今後の展望について発表が行われました。

 

UAVレーザーの実務利用効果と展望

建築補償測量グループ 荒屋 博司

 近年、3次元を使用した技術が確実に進歩してきており、当社でもUAV写真を用いてSFMで点群を作成する点群測量や、地上レーザーを用いた点群測量を業務で活用するなど3次元技術利用が進められている。
 本発表では、SFMや地上レーザー以上の効果が得られるUAVレーザーについて業務で活用しながら検証を行ったので、その実務利用の効果と今後の展望について発表が行われました。

 

排水作業準備計画の概要とその取り組み状況について

河川砂防環境グループ 楠 馨

 近年各地で大水害が発生していることを受け、「施設では防ぎきれない大洪水は必ず発生するもの」へ意識を変革し、社会全体で洪水に備える「水防災意識社会」を再構築する取組が進められている。また、この取組をさらに充実し加速するため、2020年度を目途に取り組むべき緊急行動計画の作成・改定がなされている。
 本発表では、この緊急行動計画の一つに位置づけられている「排水作業準備計画」の概要と道内の昨年度末時点における取り組み状況について発表が行われました。

 

2019年6月30日