映画シン・ゴジラとディスラプション(創造的破壊)

 12日、テレビ朝日系で放送されたシン・ゴジラの平均視聴率は15.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と高い数字だったようです。小さいころにはよくゴジラ映画を見に行っていましたが、昨年の封切り時には残念ながらこの歳でちょっと恥ずかしい思いもあり映画館まで足を運べませんでした。そんなわけで今回のテレビ放映はとても嬉しく、録画してゆっくりと見ることができました。
 さて感想というと従来のゴジラと違って、戦う相手(怪獣)がいない。ただ首都圏に上陸して移動するだけ。その足跡には破壊された街の残骸と放射能が残留しているといったものでしたが、それはそれでゴジラは何をどうしたいのかが不明確なので想像が増幅されるとともに、人間の知力との対決を、迫力ある映像で楽しむことができました。
 また映画評では現在の日本の行政の縦割り社会や意思決定の複雑さ(遅さ)、優秀な官僚、原発など世相を表現しているところも注目されていたようです。私的には壊滅的な東京の状態をみて復興にはどのくらいの時間と費用がかかるのかなとすごく気になるところは、普段から災害に携わっている業界の職業病かもしれません。また映画の終盤で、「日本はスクラップ・アンド・ビルドで成長してきたので、大丈夫」と日本人の忍耐力と創造力を表すセリフに少し共感しました。

 話は変わり、今年も世界経営者会議というセミナーに行ってきました。今回のテーマは「未来を拓く(ひらく)革新力 ~激動期のリーダーシップ」です。そしてメインのキーワードは「ディスラプション(創造的破壊)」でした。相変わらず過激なキーワードという感じですね。今の時代は様々なイノベーションが進み、外部環境は大きく変化して、これまでのシステム等が破壊されているので、企業は過去の経営手法やシステムでは破綻してしまう。
 したがって、企業もそれに対応したイノベーションを進めなければならないといったメッセージだったと思います。また、日経新聞に掲載されたIMD教授のドミニク・テュルパン先生の記事から引用しますと、このような時代の「リーダーには4つの条件がある。1つ目は謙虚さだ。自分よりも他社の方が知っているという事を認められるかどうか。2つ目は常に変化があると意識する適応力。3つ目は長期的なビジョンを明確に示せるか。4つ目は新しい物事への興味を持ち、積極的に他者と交流しようとする姿勢だ。」という事でした。

 話を戻し、前述したリーダーの4条件をシン・ゴジラの主人公である危機対応のリーダーを演じた長谷川博己の言動を重ね合わせてみると、各シーンにおいて、まさしくこの時代を引っ張っていくリーダーの条件を満たしていたように思いました。そしてゴジラは世相を背景とした創造的破壊者を象徴している気がします。ちょっとこじつけすぎの感はありますが、私の中ではけっこう重なった内容であり、シン・ゴジラは経営学におけるさまざまな面から言及しているのかと、あらためてこの映画の奥深さに感心したところでした。