報奨金と内発的動機づけ

 6/29の報道で東京五輪の野球に破格の報奨金が用意されているという。

 メダルの色によって選手、首脳陣の一人ひとりに報奨金を支給する方針で、金メダルの場合は500万円に設定されており、選手24人、首脳陣6人の計30人に対する報奨金は最大で1億5千万円。国内の1種目に対する報奨金では、破格の金額となるそうだ。さらにJOCからメダルの色によって報奨金が出るため、野球代表24選手は金メダルなら合わせて約1千万円受け取れるという。実に夢のある話だ。
 また一方で、新型コロナのワクチン接種に係り、不足している打ち手を高額な日当で募集している事態も頻繁に報道されている。緊急事態での人員確保には効果的な一つの手段である。ただ、このような報道に触れるたび、職務満足の源泉である「内発的動機づけ」が崩れていくのではと危惧している。

 というのも参考にしている経営学の書籍において、お金のインパクトは強く、金銭的報酬で逆にやる気を失うと紹介されている。人は金のために仕事をするのではなく、本来面白いから仕事をする(もちろん困らない程度の生活が確保されている前提であるが)。それが仕事に強い金銭的報酬が介在すると、お金のために仕事をするようになり、金銭的報酬が下がれば職務満足が得られなくなり、その仕事に対するやる気が失われるという。

 今回の野球選手やワクチンの打ち手のような事例の場合は、杞憂に終わるかもしれないが、五輪の野球を通じて国民に夢や面白さを与えることや、医療を通じて国民の健康を守ることの「内発的動機づけ」による「やりがい」を失うことなく頑張ってほしいと願っている。報酬は結果であり目的ではないことを、報酬を提供する側も享受する側も忘れたくはないものだ。