作品のその後

 8月下旬に、かつて自分が設計した水制工のフォローアップに行ってきました。水制工の概要については、弊社HPの技術レポート(旧)「誰でもできる石組み水制工」2002年8月にて紹介しております。
 きっかけは外部の研究機関の方から、水制工について勉強したいということで当水制工についての問い合わせがありました。その中で、私も約19年が経過した現地をフォローアップしたかったこともあり、喜んで案内係を引き受けました。
 写真1は石組み水制工の完成直後です。この時点では河岸の植生が粗く構造物が目立つものの、将来は河畔林が密になり、石組みの隙間にも土砂が捕捉されることで草本が侵入し、構造物がめだたず、周囲になじんだ景観になるとともに、生物にとっても棲みやすい多様性に富んだ河岸が形成されることを期待しておりました。
 今回のフォローアップ調査では、上流の2基の先端が若干破損していたものの、水制工の機能に問題はなく、しっかりと水制群体で機能しておりました。また景観面や環境面も自然となじんでおり、当初予想していたようになっていました。このように自分が携わった過去の作品が長い時間経過して、今回のように現状が想定どおりになっていた時は技術者冥利につきます。最近の水制工にはコストや施工技術の面から石組みを使われることは少なくなってきました。しかしながらランニングコストや環境面の評価も加味すれば、もう少し採用の機会があってもよいのではと思いました。今回は研究機関の人以外に弊社の新入社員も2名同行していたので、当時の設計思想や思い入れを外部や後輩に伝える機会となり、昔の技術屋としての楽しいひと時となりました。

写真1-石組み水制工の施工直後

写真2-2019年8月 現地の石組み水制工