誰でもできる石組み水制工

これは去る2002/2/1に開催された「北海道建設技術促進フォーラム」で発表をした内容です。これからの環境に配慮した河岸防御工は、水制工などの横工を用いることが有効であると、私は考えております。ところが水制工は、計画・設計におけるわかりづらさや、安全性(空石組み)に今ひとつ不安があるため、なかなか採用されずらいものとなっています。一方、石組み技術はいろいろな技術者集団や企業が熟練工の養成などに取り組まれていますが、まだまだ熟練した石工さんが少ない状況です。今回紹介する技術内容は、このような背景を元に採用できなかった“石組み水制工”の問題点を解決したものです。また水制工のみに限らず、誰でもできる石組み技術として応用できるのではないかと思いますので参考にしてください。

1.水制工の概要

写真の水制群は左岸側水衝部に5基配置してます。目的は背後地を保全するための河岸浸食防止です。この水制は本格的な護岸水制であり、多様な水際の環境を創造するといった補助的なものではありません。
水制間隔は30mとし、1基の水制長は7~20m程度です。施工は平成12年9月で完了してます。
写真から水制の水はね効果が発揮され、河岸が守られている様子がわかります。

2.工夫どころ

誰でもできる石組み水制の工夫は2つあります。

(1)自然石連結工法の採用

今回は石組み構造を強固にするために、”自然石連結工法”というのを応用してみました。これは積みタイプの護岸に使われていた既存の技術です。用いた背景としては”護岸の力学設計”にそって、石の大きさを算出すると70cm程度の大きさが必要でした。しかし景観上や石材の購入金額から比較検討すると50cm内外の石材を使用するのが妥当でした。この石材径を使用するには、石組みの所定のかみ合わせ効果が確実に発揮されていることが必要でした。一方、この条件を満足できる熟練石工の確保が難しく、だれが施工しても安全性を確保できることが必要でした。
また練り石による施工も検討しましたが、練り石構造では、将来の河床変化に追随していくのが困難であることから、水制体が一体的に変形できる柔構造にしたいと考えました。

(2)水締め

また建設費を安くするために、現地発生材をコア材に使用してますが、完成後にコア材に含まれる細粒分が抜けしまうと、水制内部に空洞ができ壊れた事例があります。したがってこれを防ぐため、中詰材を投入時に水締めをおこない、抜けてしまいそうな細粒分をあらかじめ抜いてしまいました。これによって建設後も落着きのよいものとなりました。

3.現在

2年経過しましたが、水制まわりは植生や河岸における微地形の復元状況が良く、また何度か大雨も経ていますが水制体は安定しています(写真2)。また写真1ですが、たまたま施工後の状況を見に行ったときに濁水が流れてきました(とてもラッキーです)。水はねの効果は教科書で読んで頭では解っているつもりでしたが、目の当たりにしてとちょっと感動しました。

4.これからの課題

石組みを今回用いたのは、水制体の複雑な形状をつくるために、小さなパーツによる組み立てがベストであったからです。これは石材でなくてもかまわないので、今後さらに安い材料を用いた安全な水制の建設方法を考えていくことも必要です。

文責:細川 康司

2002年8月12日