住民参加の道づくり

【誰のため、何のための道路づくり?】

地域にとって本当の道路のあり方を見出すために、住民参加を進めるのです。その中で国の方針に合致するもの、道や市町村が主体となるもの、住民相互の協力によって実現させるものを明確にし、地域が一丸となって事業を推進することが何よりも大切なことです。
したがって、道路づくりの答えは住民にあると私たちは考えます。

【公共事業で得られる成果を考えるために】

国土土交通省では平成15年度から、無駄な道路建設を抑え、効率の高い道路整備を促すために『公共事業で得られる成果』を重視した予算配分を予定しています。これは以下に示す18の客観指標を多く達成する道路に対して予算を優先的に配分するものです。
こうした中、各地方の道路政策や各種プロジェクトにおいては、先んじて⑰住民の満足度と⑱情報公開に関して取組み、住民が何を望んでいるかを再確認することが大切です。
この2つの指標は、残りの16項目とは異なり、あらゆる視点からの総合的な評価項目であり、すべての指標のあり方を浮き彫りにできるからです。

国土交通省の新たな視点『18の指標』

  1. 渋滞の緩和
  2. 都市計画道路の整備率
  3. ETCの利用率
  4. 道路のバリアフリー化
  5. 無電柱化率
  6. 自動車専用道路の利用率
  7. 地域の中心都市へのアクセス
  8. 日常の買物などに必要な道路の整備
  9. 沿道環境への影響
  10. 夜間の騒音削減
  11. 二酸化炭素の排出削減
  12. 死傷事故率
  13. 災害時の中心都市へのアクセス
  14. 道路の維持管理の水準
  15. 保全の状況
  16. 路上工事の削減
  17. 住民の満足度
  18. 情報公開

【住民の満足度を探る情報公開の場 】

行政は、広く多岐にわたり考えを巡らしながら事業を進めておりますが、それはまさしく住民の満足度をいかに捉えるのかと言うことにほかなりません。
民意を行政に反映させるワークショップでは、どんな『ねらい』『テーマ』『達成目標』を掲げているか、そして、いつまでに何を結論づけるのかのスケジュールを参加者の方々に端的にわかりやすく伝え、広く意見の交換の場として活用していきます。
参加者の皆さんは、意見を言い放すだけではいけません。意識としては『行政参加(政治参加)』です。単に自己主張を繰り返すだけではなく、全体を見渡し、行政職員を含めた参加者相互の意見に耳を傾けることが大切です。その中で、『ものづくりの意図』を明確にしていくことこそが、地域の答えであると私たちは考えます。

【ものづくりの意図とは】

「△△のために○○が欲しい」「○○だから□□の整備が必要」といった『ものづくりの意図』は、住民の方々の要望をより多く、かつ的確に設計へ反映することができ、予算化の可能性も高まります。
なぜなら、前述のとおり道路の予算化には、指標を明確にする必要があるからです。短絡的に「高価な平板舗装が欲しい」と主張するよりも、例えば「道路のバリアフリー化のために」とか「沿道環境への影響を考えて」と主張する方が整備の必要性は明確となり、18の指標と照らし合わせることができるのです。
視点を変えれば、一つの整備が様々な意図に対して効果を発揮することも期待できます。

【ワークショップでは】

『誰が』よりも『何が』が大切です。ですからワークショップでは、権威のある有識者の主張よりも、子供が話した素朴な意見に賛同を集めることも稀ではありません。一方、付箋紙に意見を書き模造紙に集約することだけが、ワークショップではありません。
大切なのは互いの立場を理解しながら、できる限り多くの主張を盛り込んだものづくりを実現させることです。ですから、ワークショップで得られる成果とは、白か黒かの判定と言うよりも、灰色の白黒加減と考えるのがよいでしょう。

【私たちができること】

それは、ワークショップの計画立案から開催・進行、そしてその場で得られる『使い手』と『作り手』の意図を汲み取った実現可能な設計を進めることです。これが私たちの培った技術力、応用力を発揮すべく、道づくりの要請であると自覚しています。

※PI方式とワークショップ方式について
最近、耳にする言葉としてPI(パブリックインボルブメント)方式があります。これは、ワークショップ方式と比べると、対象となる主体の大きさと事業段階に大きな違いがあるようです。
PI方式は、計画の初期段階で市民の関心を高め、市民や各種団体、有識者の意見を計画決定前に反映させることを大きな目的に、計画に対するニーズの把握や意識向上のために行われることが多い。
これに対してワークショップ方式は、子供からお年寄りまで、施設を利用する方々の知識や経験、意見、不満を持ち寄ることで、より具体的な設計に向けた住民と行政、そして住民と住民との相互理解を促します。
さらに、近い将来完成する施設のきめ細かな姿や形のアイディアを、設計と工事へ反映させるために行うことが多いのです。

ワークショップ方式による街路の計画・設計業務

■住民と行政による平面プランの検討

■試験施工や事例をもとにした検討

■簡易模型による段差等の確認

私たちが行ったワークショップによる主な計画・設計業務

平成13年度 登別市亀田記念公園実施設計

自然環境に留意したバリアフリー化を図るために、地域の身障者団体や自然保護団体の協力を得て話し合いを進めました。

平成12年度 釧路町柏東公園実施設計

たった一人の障害者の意見が公園のユニバーサル化への機運を高め、参加者全員が共感したことが印象的なワークショップでした。

平成10年度 沙流川水辺の楽校プロジェクト

ワークショップでは大人と子供が別々に話し合いを進め、川に対する相互の認識の違いを明確にしました。地域が育む川づくり、まちづくりの本質がそこに隠れていたように思える話合いでした。

平成9年度 北広島市虹ヶ丘公園実施設計

公園設計において当社がはじめてワークショップを提案した業務です。住民意識を的確に捉えた無駄のないプログラムとスケジュールにより、隣接するパークゴルフ場と連動した地域の交流の場を実現しました。


 

担当部署:地域開発部

2002年9月13日