GPS測量の基礎知識

1.GPSとは

GPSとは、 Global Positioning System(汎地球測位システム)の略で、アメリカ合衆国によって打ち上げたGPS衛星(地上約2万kmを周回)の電波を受信して緯度経度を測定し、位置等の計測を行う技術です。

2.GPSの利用方法

GPSの利用方法としては、高精度(数cm)な位置の決定を必要とする測量業務から数十m程度の精度で良いカーナビゲーション等のレジャー用と幅広く目的に応じた利用方法があります。
大きく分けると図-1のように3つに分けられます。


■図-1

2-1. 時刻同期

位置の決定では有りませんが、GPS衛星から送られる正確な時間の情報を取得できます。

2-2. 単独測位

1つの受信機を利用して、衛星からの距離を測定して受信機の位置を決定する方法です。
精度数十m程度なので、測量等の高精度を必要とする作業には、向いていませんが、安価な受信機で利用できますので自動車や船舶の位置測定、登山等のレジャー用として使用されています。

2-3. 相対測位

複数の受信機を利用して、その位置を測定する方法です。
精度は、数cm~数mと精度が高い為、様々な測量業務に利用されています。
大きく分けると図-2のように2つに分けられます。


■図-2

ア)DGPS測位
DGPS測位とは、単独測位を既知点と未知点とで同時に測定を行って既知点での既知座標と測定座標との差を、未知点での測定座標に補正をして位置決定をする方法です。
数mの精度を実時間で決定が出来るので、船舶、航空機の位置測定、測量業務では、深浅測量の船位の誘導に利用しています。
最近ではDGPS対応のカーナビゲーションもあります。

イ)干渉測位
干渉測位とは、複数地点で受信機を同時に観測をして衛星からの電波到達の差(位相差)を解析する事によって受信機間の距離を求める方法です。
測量業務では、高い精度が必要な作業に用いられています。
干渉測位には更に色々な測位方法があり目的に応じた方法により、利用されています(表-1参照)。

■表ー1

観測時間 精度 利用方法
スタティック測位 約60分 約1cm 1~4級基準点測量
 短縮スタティック測位 約30分 約2cm 3~4級基準点測量
 キネマティック測位 数分~数秒 約2cm 3~4級基準点測量
地形測量

更にキネマティック測位の1手法にRTK(リアルタイムキネマティック)測位があります。

名の通り、基準局(固定点)と移動局(新点)とに分かれ、受信機の観測デ-タ-を無線機や携帯電話等を利用して交信を行い、すぐに計算し座標が決定されます。
従来のスタティック測位に比べ精度は劣りますが、観測時間は数秒ですみ、少ない人数で作業できますので、格段に作業効率が良く最近特に注目されている測位方法の1つです。

■写真1.移動局観測状況
(女性でも持ち歩きができるほど軽量です)

■写真2.固定局観測状況
(三脚の後ろの高いタワーは無線機用のアンテナです)

3.GPS測量機の種類

測量業務で使用される受信機には、1級GPS、2級GPSの2種類あります。

・1級GPS測量機:2周波数測量機
GPS衛星から発進されている搬送波 L1帯、L2帯を受信できます。

・2級GPS測量機:1周波数測量機
GPS衛星から発進されている搬送波 L1帯のみの受信できます。

4.2周波を受信できる利点

スタティック測量では、長距離観測(10Km以上)を行うと電離層の影響が、精度劣化となりますが、2周波観測をする事によってL1帯、L2帯異なる周波数の観測値を利用して電離層の影響を補正できます。
短距離においては、電離層補正の本質的問題の為かえって精度低下の原因となりますので、10km未満では1周波観測で行います。

キネマティック測量では、初期設定という操作が必要なのですが、固定点と移動点のアンテナを入れ替えるアンテナスワッピング、既知点から出発する等の方法により行いますが、移動時に衛星からの電波が遮断されると、再度初期設定が必要となります。
2周波を使用して行うと、任意の場所で数秒静止する事で初期化が行えるので作業効率もよくなります。

1級GPS測量機と2級GPS測量機は、2周波、1周波の違いであり1級=高精度、2級=低精度ではありません。

5.当社での利用方法

当社では、1級GPS測量機2台、2級GPS測量機6台を所有しております。実業務では、4級基準点測量、現況測量、横断測量等の地形測量、既設境界標、三角点等の探索を1級GPS測量機を使用しRTK測量により、行っています。

1~3級基準点は2級GPS測量機6台使用しスタティック測量、短縮スタティック測量により、行っていますが、長距離(10km以上)の観測時には1級GPS測量機により行います。又、セッション数を少なくする為に合計8台を使用し基準点測量を行う事も有ります。

技術研究では、電子基準点のデータ等を利用しての実験検証等、GPSの技術向上を目的とした利用をしています。
今後は1級GPS測量機によるRTK測量で、基準点測量、地形測量、深浅測量等の調査測量の他国土地理院により電子基準点の24時間観測のデータ提供サービス、民間企業が運営するVRSデータの配信システム等を利用し、GIS構築に必要な数値データの取得、航空写真測量の標定点設置、深浅測量の船位誘導等の新しい技術を活用した測量を考えています。

6.おわりに

私たちは(当社では)、新しい技術を積極的に導入することで測量方法(手法)の選択肢を広げ、お客様の満足できる精度の成果品を短期間・低コストでお届けすることを目指します。

■写真3.車通りが多かったので1.5mポールを使用しました。

■写真4.熊と遭遇した思い出の現場です。

■写真5.上空視界を確保する為10mポールを使用しました。(設置には4人で30~40分かかりました。)

文責:伊藤 哲也

2003年6月18日