街路設計:Vol.2機能美のアイデアと工夫とは

住民参加による機能美を追求した街路設計について、3回に分けて記載しています(2回目)。


この通りには、除排雪の作業効率を高めるためにシンプルなデザインが求められていました。私たちは、具体的に真冬の積雪と初春のアイスバーン、融雪水に焦点を絞り、除雪作業の実態や日陰の動向などを整理して話し合いを進めました。

除雪の妨げとなるものは?

除雪作業は、車道わきの雪を小型ホイルローダーやパワーショベルで車道へ掻き出しダンプで運び出します。この作業の妨げになるのが、NTTと北電の電柱そして照明柱なのです。そこでワークショップでは、この柱モノの絶対数を少なくすることが話し合われ、道路照明を電柱に取付けることが提案されました。 防犯灯として後付け的に、或いは土地の制約からこうした整備を行うことがあります。でもここでは道路を照らす機能を満たしつつ、効率よく除雪するためのシンプルさの実現を意図したのです。

さらに、私が期待したのが光の連続性による演出です。夜の街路を想い浮かべたとき、同じ高さ、同じ色合いの光の連なりが、夜のシンプルさを実現できるのです。土木現業所では、まず道路整備で理想とする照明配置を検討しました。近年、照明設備は性能が高まり、1灯で35m程度までを照らせるようになったことも後押しとなりました。


■整備前の様子。右がNTT柱、左が北電柱です。

電柱に照明柱をつける

当たり前ですが電柱は、電気を送る目的で配置されています。電線が風雪で切れてしまうことなく、地域内を巡るように考えられています。一方、道路照明は、路面をムラなく照らすために、等間隔で設置しています。それぞれに目的のある2つの施設の整合を図り、電柱を道路照明の間隔に配置することで、道路を均等に照らすことができ、かつ照明柱を省くことができるのです。

北電との協議では、北電柱は灯具と送電線の高さが重なってしまう。しかし、NTT柱ならば高さにゆとりがあり、高圧線の接触の心配がないことが明らかとなりました。再度、照明配置の検討を重ねた結果、道路北側に設置されているNTT柱に灯具を設置することを決定しました。

幸いにも北電とNTTは、町のTMOメンバーと沿道地権者であり、土木現業所の意向や住民の思いを寛容に受け入れ、その意図を理解していただくことができました。これも住民参加の効果の一つと私は思います。


■整備後は、NTT柱を長くして照明設備を添架しました。照明設備は進行方向に対してシルエットが重なるように設置しました。

照明設備のシルエットを小さくする

電柱には照明の設備として灯具やアーム、変圧器などを添架するわけですが、これらをどう組み合わせるかによって、今度は電柱のシンプルさが問われるのです。歩行者やドライバーが照明をどの向きから多く見るか、その方向のシルエットを小さくすることを私は考えました。
そして、写真のように進行方向から見たときに、電柱と変圧器が重なるように配置しました。既製品にないちょっとした工夫でした。


■照明柱を無くするという『引き算』のデザインは、結果としてコスト縮減に貢献しつつ、除雪の効率を高めました(写真提供:帯広土木現業所大樹出張所)。

植樹帯の浸透機能を高める

土木現業所の担当者が一つの名案を思い浮かべました。通常、道路の雨水は路肩に設置された雨水桝に落ち、植樹帯の地下の管を通って歩道下の雨水桝に流れ込みます。これを1セットとして道路の両側に約40mおきに配置します。歩道下ではこれらを全て繋ぎ、河川等の安全な場所に流します。

名案とは、植樹帯下の管を外側から水が染込む『透水管』を用いることで、春先の融雪水、台風シーズンの洪水をできる限り早く浸透させて歩道の浸水を無くそうとするものです。これには公園技術をもとに検討し、管の周囲を砂利で置換え、地表部分には河川護岸からヒントを得た飛石風の製品を布設することとしました。


■植樹帯の地下を通る管には、上面に無数の空隙がある 『透水管』を用いました。融雪水の浸透を促すことがねらいです。

間仕切りや通路としての工夫

単に植樹帯といっても、子供達の飛び出し防止や一時的な堆雪場所、ベンチ等を配した木陰の休憩場所など、視点を変えることで様々な使い道が見えてくるものです。
植樹帯にも機能美を考え合わせています。飛石風の製品を布設することで植樹帯の草花は分節されます。歩く速度で植樹帯を眺めていくと、草花に変化がある方がドラマ性ができて楽しい道となることでしょう。また、植樹帯を『勝手花壇』と称して沿道の皆さんに開放する区間では、隣りの花壇との境界が必要になります。このような間仕切りとして、この飛石風の製品が機能するようにしました。

また賛否はありますが、車道の実用を考えると駐停車した人は、必ず植樹帯を横断していきます。そして、せっかく手入れされた『勝手花壇』が、こうした方々に踏まれてしまう恐れがあるのです。であれば、最初からいくつかの通路を決めておいた方が問題はおきません。したがって、この飛石風の製品は、1.0m程度の幅にして車を降りた人が通れるようにしたのです。

■地表面は通路として、或いは勝手花壇の間仕切りとして機能するようにデザインし、マンホールもアクセントにしました。

このように、実施設計レベルで様々な機能を議論することは、具体性のあるアイデアが湧きやすく、現場に即応した設計を進めることができます。それが住民参加の効果であると私は思います。

また、ワークショップ参加者にとっては、話した言葉が形になっていく充足感があったのではないでしょうか。

担当部署:地域開発部

2003年1月17日