平成26年度 和光技研技術発表会

技術研究発表会の様子

今年で第18回目となる「和光技研技術発表会」を平成26年7月5日(土)に開催いたしました。本年度は、構造物の維持管理に関して専門的な知見をお持ちの北海道大学佐藤靖彦先生を特別講師としてお招きして御講演いただきました。


■特別講演

コンクリート構造の損傷・破壊に関する先端的評価技術と今後の設計への展開

北海道大学大学院 工学研究院 北方圏環境政策工学部門
維持管理システム工学研究室 准教授
佐藤 靖彦 氏

佐藤先生のご講演構造物の性能評価という視点における設計と維持管理の連続性は極めて重要である。
それを可能とする技術として、凍害と化学的劣化を対象とした、外観に基づく簡易な評価法と非線形解析を用いた精緻な評価法についてご紹介いただいた。
さらに、これらの評価法を活用したかぶりコンクリートの剥落予測、水利施設や地中構造物のバーチャルモニタリングの考え方等もご紹介いただいた。

■社内技術士講演

サイエンス(技術)コミュニケーションについて~専門理論を如何にわかりやすく人に伝えるか~

水工課 北村 明

kitamura高レベルな知識は、技術者が備えたい知恵であり商売道具でもあるが、“高レベルな話”は技術リテラシー差のある相手には伝わらず、説明者自身も理論の表面だけをなぞってしまう危険性をはらんでいる。
本講演では、むずかしい理論の根っこにある「本質」はほとんどが単純な法則である事、“根っこ(本質)”をつかまえておく姿勢(好奇心や努力、勉強)を身に着けることが、どんなレベルの相手(小学生だろうとも!)とも「話せる」技術者となるための近道である事として発表した。

■技術テーマ部門

火山灰質土の特徴と設計・施工への応用

防災地質課 加藤 貴文

katou私たちが住む北海道は、全面積の40%以上が未固結な火山噴出物でおおわれており、近年では火山灰台地や火山周辺域にまで土工事が及ぶようになった。ところが、火山灰質土に適切と思われる設計法はまだ確立されていないため、砂質土や粘性土の設計法がそのまま適用されているのが実情である。
本発表では、火山灰質土の工学的性質について説明するとともに、火山灰質土の設計・施工上の留意点について報告した。

新河川事業設計要領による樋門設計について

水工課 長束 亮平

nagatsuka平成25年8月の河川事業設計要領の改訂により、北海道の河川管理施設において、レベル2地震動に対応した耐震設計が標準化されることとなった。さらに、同改訂により、樋門の開閉操作の自動化を目的とした自動開閉樋門設計要領(案)が取りまとめられた。これらのことを受けて、本発表では、樋門の耐震性能照査と自動開閉樋門の設計のポイントについて、当社の設計事例を交えて紹介するとともに、現時点における設計上の課題・問題について報告した。

測量の作業について

測量調査部 荒屋 博司、川本 貴大

araya測量作業の基本的な流れや各項目について説明を行った。主な項目として、基準点測量・水準測量・細部測量・空中写真測量・路線測量(道路・河川)・河川測量(作工物調査)をピックアップし、具体的な実施内容の他に留意点等について説明した。

土のうによるニホンザリガニの一時的隠れ場としての効果

環境計画課 鈴木 雅人

suzuki日本固有種であるニホンザリガニ(Cambaroides japonicus)は、礫下を隠れ場として利用する種であり(川井など、1992)、生息地消失の進行等により絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されている(環境省、2012)。本種の主な保全対策は”移殖”が中心となるが、移殖先の環境に本種の隠れ場が確保できない場合、移殖先を変更するか創出する必要があると考えられる。そこで、現地で実施できる隠れ場の創出として土のうを用い、本種の隠れ場としての効果を検証した。

当社における3Dプリンタの現状と展望

情報システム室 香川 誠

kagawa近年、「ものづくり」を変える造形技術として、3Dプリンタが世界中で大きな話題を呼んでいる。そのため、情報システム室では2012年8月に小型3Dプリンタを試験導入するなど、情報やノウハウを蓄積してきた。このたび最新型のフルカラー3Dプリンタを導入することとなったため、3Dプリンタとはどのような物か、私たちの業務にどのような変化をもたらす可能性があるか、当社の事例を交え報告した。

河川シミュレーションソフトiRICを用いた実河川への摘要事例 -河川砂防課の取り組み-

河川砂防課 水落 彰宏

mizuochi河川砂防課では「技術力の向上」を目的として、各人が河川シミュレーションソフトiRICを用いた二次元河床変動解析に昨年度から取り組んできている。iRICは「一般財団法人 北海道河川財団」が開発した無償の計算ソフトであり、河川の流れや河床変動計算、氾濫計算を行うことが可能である。本発表では河川砂防課員が担当している河川において取り組んできた実河川を対象にした計算事例について報告した。

市町村橋梁の長寿命化対策の実施状況の報告と新たな点検診断法の試行

道路・構造課 長坂秀一

nagasaka当課の主要な顧客である道内の各市町村では、北海道開発局や北海道と同様にすべての管理橋梁に対して、「橋梁長寿命化修繕計画」を策定し、従来の事後保全的な維持管理から、計画に基づいた予防保全的な維持管理への転換を図ろうとしている。本発表では、当社が携わった市町村の長寿命化対策の実施状況や、維持管理における市町村が抱える問題点等を報告した。さらに、これら問題点を解決する一手法として、合理的な点検診断法(札建協法)を用いた実橋の構造性能を数値化した事例を紹介した。

2014年7月30日